論理の流刑地

地獄の底を、爆笑しながら闊歩する

「知的トレーニングの技術」+「アイディア大全」

執筆・リサーチの方法論がいまいちイケてないんじゃないか、
というのが最近の自分自身の疑念としてあるので、読んでみた。
忘却の前にちょいと書き残しておく...

ひとこと感想

「アイディア大全」

アイデア大全――創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール
・ネット上では有名なブロガー、読書猿さんの著書。いろいろな方法論が載っていて大変に有益なブログ。
・ただし、レビューで絶賛されている割には使い勝手が...という印象。
・もちろんこの使い勝手の悪さは承知して、この形で執筆されているのだろう。
・(問題設定・仮説提示・分析・結論提示という)知的生産工程を
 ワンストップで最終成果物まで仕上げることが生業の人(自分含む)が読むと、
 (料理の全体工程ではなく)下処理の方法やソースの作り方ばかりが載っているような、
 片手落ちのレシピを提示されている気分になるのでは。
・部分工程の改善案集なので、全体工程にうまく取り入れられる人向けの本である。
・個人的には「バグリスト」「コンセプト・ファン」「仮定破壊」「さくらんぼ分割法」「等価変換法」らへんを意識的に作業フローに入れて中間成果物をデザインしとくともう少し、執筆のスピードが上げられるんだろうな。
・というか「発散」と「収束」をうまく分けられてないんだよなぁ私は。
・この本に対して「こんなことみんなやってるじゃん」という批判もあるが、意外と基礎技術と基礎技術として認識して研磨するのって大事やない?
 

「知的トレーニングの技術」

知的トレーニングの技術〔完全独習版〕 (ちくま学芸文庫)
・「アイディア大全」の著者がブログでプッシュしていたのに乗って購入。
・前菜とデザートは若干癖あるが、メインディッシュの部分はかなり良い本である。
・「知的生産過程のモデル」(p.111)は自作の執筆工程と、かなり符合していて
 驚嘆すると同時に少し笑ってしまった。似たこと考えるひとはどの時代にもいて面白いなぁ。
・「知的生産過程のモデル」の12工程をみていくと、
 「#6:構想(細部まで説明可能な概念図、思考の地図、観念の設計図を作成する段階)」から
 「#7:構成(観念図を小分けした「目次」につくり変えて、面を線に変換する段階)」までの流れが、なんというかKJ法AB型(川喜多「発想法」参照..)と同じ思想を感じる。
・「蒐集」を分析・研究の基礎作業として重視するというのは目から鱗である。というかこれが個人的この本から得られた一番の示唆。以下、いくつか示唆的なところを引用。

あつめることは分析の第一歩だ。物でも情報でもいいが、あつめているうちに知らず知らずにそれについての鑑識眼が身についてくる(p.119)

ロラン・バルトのモード研究について)
これは、果てしない蒐集作業に一定の枠を与えて、研究対象の体系性を確保するという方法の好例で、
この枠づけが逆に、テーマを明確に限定することにもなっていることがわかるだろう。
だから、どこまでも趣味にとどまる蒐集ならともかく、知的生産を目標にした蒐集はなんらかの体系性・全体性をあたえる必要がある(p.122)

・個人的に目標としている某K先生も蒐集魔という話を耳に入れたことがある。要するにケース × 変数のマトリックスを蓄積していく、という作業が知的生産の「発散」のフェーズに(無論「収束」にも効いてくるが...)非常に有益であるということである。ここがおろそかだなぁ自分は。


ということでこれから何をするか

・また自分の執筆工程を少し変えていく。
・中間成果物をどうするかということについて、蒐集→発散→収束という段階を認識しながらテンプレートを改訂したい。
・人に説明できるように、進捗報告資料とも密連結にしておきたいところ。